僕と他人の見分け方

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僕たちの偉いご先祖様は言いました。人類は皆、平等であるべきだと。 彼らはそれを実現すべく、様々な施策を行いました。 ルールを決めてみたり、裕福な人からお金を取り上げたり……。とにかく、色々やってみたわけです。 しかし、どれも失敗に終わりました。ルールを破る人はいますし、貧乏人からもお金を取るので、平等が顔を出す気配は一向にありませんでした。 世界は常に不均一で、出っ張りを押すと別の場所も引っ込んだり、引っ込んだところを引っ張ると他の場所が引っ込んだりするのです。 この有様では、平等なんてものは夢のまた夢。誰もがそう言って諦めようとしたところで、偉いマッドサイエンティストが名乗り出て、こんなことを言うのです。 「もう、皆の遺伝子を全く同じにしてしまおう」 その科学者が言うには、皆の遺伝子を同じにすれば、次の世代の子どもは全く同じ人間になり、能力や容姿による格差がなくなるらしいのです。 僕たちの偉くないご先祖様は、当然文句を言います。 「遺伝子を全く同じにすると言っても、人種はどうなるんだ」「黒、白、黄を全部合わせた色にすればいいんじゃないか」「それじゃあ真っ黒になるだろ」「白と黒の間を取って灰色にしよう」「黄色はどこにいったんだ」 そんな文句が飛び交っても、偉い科学者は動じずに答えを出しました。 「肌の色は青色で統一する。どことも間を取らない方が公平だろう」 素晴らしい解決策ですね。青色の肌なんて、アバターみたいで気持ち悪いなんて言う人もいたらしいですが、みんなで気持ち悪くなれば気持ち悪くないはずだという意見に封殺されたそうです。 かくして、真の平等がこの手の中に……というわけにはいきませんでした。 しかし、能力や容姿が全く同じになったところで、僕たちの手に平等なんてものは握れないでしょう。例えば、生まれた家が裕福か、生まれた国はどこか。 そこには、僕たちが思っているよりも大きな壁があります。
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