僕と他人の見分け方

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少し電車に揺られていると、僕の目に真っ青が飛び込んできました。僕たちの肌ではありません。 海です。この電車の車窓からは海を望めるのです。そういえば、八歳になるまでまともに海を見たことがなかったなあと、しみじみと窓の外を見つめます。 五、経験が違う。 海を見たことがある人がいれば、見たことがない人もいるでしょう。ただ、人と会うたびに思い出話をするのも面倒なので、不採用としました。 僕と他人の見分け方は、まだまだ見つかりそうもありません。やはり、右手の甲に頼るしかないのでしょうか。 どうしても見分け方が見つからないのであれば、僕自身に特徴をつくってしまうというのはどうでしょう。 例えば、世界で一番水泳が速くなれば、「世界一水泳が速い僕」として、他人との区別はばっちりな気がします。 六、世界で一番水泳が速い。 と、メモ帳に書き込みましたが、すぐに二重線で潰しました。僕たちの能力は同じなのですから、みんな同率で世界一水泳が速いはずです。 だいたい、水泳が速いことを見分ける方法が、泳ぐ以外にないので、見分け方として不便なことこの上ありません。
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