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さて、どこかの店に入ろうかと思ったところで、先ほど駅で労働量を使い果たしてしまったことに気づきました。僕はなんて馬鹿なんだと自責の念にかられました。
九、頭の作りが違う。
そう書いたあと、またも二重線で消しました。僕たちの能力は全く同じです。僕たちはなんて馬鹿なんだ。
こうして、大した結果も得られずに帰路につきました。結局、自分なんて見つからなかったのです。
自宅について溜め息を吐くと、僕の両親のどちらかと思しき人が僕に話しかけてきました。
「少し落ち込んでいるみたいですね。今日は何かあったのですか」
それを聞いて、僕はこう答えました。
「僕が落ち込んでいるのだとしたら、何かあったからではなく、何もなかったからだと思います」
そうなのです。何もなかったのです。僕と他人を見分ける方法が、何も見つからなかったのです。
「そうですか。何を言っているのかよくわかりませんが、あなたは落ち込んでいるのでしょう」
その人はそう言って、手鏡を僕の方に向けました。そこにはひどく悲しそうな僕の顔がありました。
九、表情が違う。
いえ、人は落ち込んだ時に必ずこんな顔をするのでしょう。こんなものでは見分けられません。
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