家から飛び出した。

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でもそれは、ある日突然崩された。 数人の人間の男がやってきて いきなり僕たちをつかまえて、ケージにいれて車に詰め込んだ。 ケージ入れられて車で連れて行かれるところと言えば、病院かな。 治療や注射は特別痛いわけじゃないけれど、 病院の独特の雰囲気が僕は、好きじゃない。 しばらく走ってついた先には、ケージや檻に入った犬や猫がたくさんいた。 この光景は、見たことがある。入院しているのだろう。やっぱりここは、病院のようだ。 でも、どうして僕は連れてこられたの? 年に1回のワクチン注射は、この間したばかりだよ? 「ここは、保健所だよ」 目の前の檻からかすれた声が聞こえてきた。 「ん? ホケンジョ? なにそれ?」 檻の中にいた老犬が教えてくれた。 老犬はそれきり口を開いてはくれなく、 保健所がどういったところかは答えてくれなかった。 それからしばらく僕たちは、ケージの中で過ごすことになった。 ごはんや水はくれるけれど、あんまりおいしくないものばかり。 それから何日経ったのだろう。 ずっと閉じ込められて、退屈でつまんなくて悲しくて、どうにかなってしまいそうだ。 ごはんを運んでくる人間は、なんだか無表情で、 遊んでくれたりもしない。なでることもしない。 「にゃあん。にゃあん(ねえ、ねえ、ここから出してよ。一緒に遊んでよ)」 必死で訴えてみても、目も合わせてくれない。 僕は気力もなくなって、もう鳴くこともせずに、 ケージの中で丸まっているだけになった。 まわりのみんなも同じ気持ちのようだった。 ここが、“ホケンジョ”だと教えてくれた老犬も、 ずっと、小さく丸まっているだけだった。 それから、さらに数日が経った頃、 いつものごはん運びの人間じゃなくて見たことのない女の人が、やってきた。 女の人は、とっても明るい表情で明るい声で 「ほおら、もう、みんな大丈夫だよ」そう言って、 僕たちをやさしく抱きしめてくれた。 あの老犬も、「くうん、くうん」と甘えた声を出している。 そして、僕たち全員はケージに入って、車で移動をした。
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