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家の場所はすぐに分かり、
塀の上にのぼって、窓から部屋の中をそーっと覗いてみた。
僕の使っていたベッドの上に、僕とそっくりな猫がいた。
すやすやと眠っているようで、窓の外の僕には気づいていないようだった。
すると、ドアノブが動くのが見えた。
ドアノブが動いた時、それはドアが開いて人間が入ってくる合図だ。
僕は見えないように、さっと隠れた。
部屋の中から声が聞こえてきた。
「チョコちゃ~ん」
!?
飼い主が僕の名前を呼んだ。
隠れたつもりだったのだけど、見えていたみたい。
僕が、返事をしようとしたその時、
部屋の中の僕とそっくりな猫が、返事をした。
「にゃ~ん」
思わず、部屋の中を覗いてみると、
「チョコちゃんは、かわいいねえ~」
飼い主はそう言って、のどをこしょこしょとなでていた。
あの飼い主は、“僕”が必要だったのではなくて、
“アメリカンショートヘア”が必要だったんだ。
先輩猫のスコティッシュホールドのモモちゃんも、マンチカンのマロンちゃんも、あのチョコちゃんも、
飼い主にとてもよくかわいがられて、しあわせに暮らしている。
猫カフェにいる僕なんかよりも、高級なごはんを食べているし、
高級なシャンプーで手入れをしてもらっている。
そして、なにより過剰すぎるぐらいの愛情をもらっている。
だけど、僕は少し、さみしい気がした。
僕は猫だからよくわからないけれど、
あの飼い主が間違っているとは思わないけれど、
なんだか、おかしい気がした。やっぱり、もやもやとした。
僕は、心の中でみんなにさよならを言って
今の新しいおうちの猫カフェに戻った。
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