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「ん、」
差し出したのは、半分に割ったアイス。
驚いた隣の彼女に、
早くとれよ、と言わんばかりに、さらにアイスを彼女の前にと突き出した。
暑い・・・
この暑さじゃ、すぐにでもベタベタになってしまいそうだ。
「も、もらっていいの・・・?」
おずおずと返された声に、
「そっちこそ欲しくないの・・・?欲しくないなら、そんな顔して見てるなよ・・・」
呆れた。
パチパチパチと大きく瞬きをした彼女。
長い睫毛が震えている。
「わ、私の事見えるの?」
「はぁ?足ついてんだろうが、お前はマジで頭もいかれてるのか?」
意味不明の言動に、呆れを通り越してちょっと心配になる。
「だって、みんな私の事見ないフリするから・・・」
「そりゃ、あれだ、その変なお面のせいだろ?」
目線を狐のお面へちらりとむける。
「関君は見ないフリ、しないんだね?」
彼女に名前を呼ばれたのは・・・
半年もたつけど、初めてかもしれない。
そんなことを思いながら、
「しようかと思ったよ・・・?でも、よだれたらしそうな勢いで俺の事、見てたから、」
わざと意地悪な発言をすれば、
彼女はほんのりと恥ずかしそうに頬を染め視線をそらした。
へぇ~、そんな顔もするんだ…
普段教室では見せたことのないレアな表情に、
いつになく、胸がワクワクした。
「・・・・・・・」
黙ったままで俺とアイスを交互に見つめる彼女に、
「ほらっ、半分にしてやったんだから、とれよ、」
彼女の手にアイスを押し付けた。
「あ、り、がと・・・」
たどたどしい消え入りそうな返事を可愛いと思いながら、
俺は口角をあげた。
「明日は滝野が買えよ?半分にできるやつ」
俺の言葉に、さらに大きく瞳を瞬かせた彼女。
さらに頬を染めて、小さくコクリと頷いた。
なんだか、楽しい夏になりそうな予感がした。
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