1/2の予感

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「ん、」 差し出したのは、半分に割ったアイス。 驚いた隣の彼女に、 早くとれよ、と言わんばかりに、さらにアイスを彼女の前にと突き出した。 暑い・・・ この暑さじゃ、すぐにでもベタベタになってしまいそうだ。 「も、もらっていいの・・・?」 おずおずと返された声に、 「そっちこそ欲しくないの・・・?欲しくないなら、そんな顔して見てるなよ・・・」 呆れた。 パチパチパチと大きく瞬きをした彼女。 長い睫毛が震えている。 「わ、私の事見えるの?」 「はぁ?足ついてんだろうが、お前はマジで頭もいかれてるのか?」 意味不明の言動に、呆れを通り越してちょっと心配になる。 「だって、みんな私の事見ないフリするから・・・」 「そりゃ、あれだ、その変なお面のせいだろ?」 目線を狐のお面へちらりとむける。 「関君は見ないフリ、しないんだね?」 彼女に名前を呼ばれたのは・・・ 半年もたつけど、初めてかもしれない。 そんなことを思いながら、 「しようかと思ったよ・・・?でも、よだれたらしそうな勢いで俺の事、見てたから、」 わざと意地悪な発言をすれば、 彼女はほんのりと恥ずかしそうに頬を染め視線をそらした。 へぇ~、そんな顔もするんだ… 普段教室では見せたことのないレアな表情に、 いつになく、胸がワクワクした。 「・・・・・・・」 黙ったままで俺とアイスを交互に見つめる彼女に、 「ほらっ、半分にしてやったんだから、とれよ、」 彼女の手にアイスを押し付けた。 「あ、り、がと・・・」 たどたどしい消え入りそうな返事を可愛いと思いながら、 俺は口角をあげた。 「明日は滝野が買えよ?半分にできるやつ」 俺の言葉に、さらに大きく瞳を瞬かせた彼女。 さらに頬を染めて、小さくコクリと頷いた。 なんだか、楽しい夏になりそうな予感がした。
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