小窓の向こうに、眩しい君

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「あたし浅原の抹茶オレが飲みたい」 「え…?今ですか?」 綺麗な指を広げて、色塗られた真っ赤なネイルを満足気に見つめてる。 先ほど行きつけのサロンから、帰ってきたばかりの美咲さんは大変機嫌が良さそう。 「今飲みたいから呼んだんでしょー」 「あの、でも私まだ掃除が」 「良子さんにやってもらえばいいじゃない。あたし今どうしても飲みたいのっ!」 浅原の抹茶オレ、紺鹿にしか売ってないのに。 タクシーで行っても30分はかかるのに。 それにお母さんは季節の変わり目で体調崩してるって旦那様の前でも言ったのに。 「…分かりました。今すぐ買って来ます」 「雫ならそう言ってくれると思った、ありがとうねっ」 手渡されたのは千円。 抹茶オレだけで電車賃は遥かに足りない。 「ごめん、今日ネイルでお小遣い使っちゃったの。またママに言ってお給料足しとくから」 「…分かりました」 そう言って、足したのは数えられるくらい。 そして多分、私が買って帰って来た時の言葉も察しがつく。 それでも行かなくちゃいけないのが、私の使命。 お嬢様である美咲さんの、我儘を聞くのも、生きるためには仕方ないこと。
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