小窓の向こうに、眩しい君

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駅を降りて、また歩くこと10分。 浅原抹茶の看板と共に見えた長蛇の列、熱気で揺らめく道に反吐が出る。 コンクリートの地面に夏の光線が照り返し、最後尾は屋根無しのガンガンと照りつける炎天の下。 梅雨を追い払った太陽は、いつも以上にその存在感を放っている。 慌てて出てきたせいで、日焼け止めはおろか日傘すら持って来ていない。 これじゃまた、皮膚が赤くなる。 「ありがとうございましたー」 待つこと20分、やっとの事で買えた、氷抜きの抹茶オレ。 汗を吸ったTシャツは色を変え、人目に晒される恥ずかしさを感じながらも、家路を急いだ。 二階建ての大きな洋風屋敷の裏門をくぐり抜け、こめかみに汗が止めどなく流れている。 シャワーを浴びたいけど、先にこれを届けてからじゃないと。 二階の一番奥の部屋にたどり着き、軽く手で汗を拭ってノックをした。 「どーぞー」 涼し気な声から許可をもらい、ドアを開けると、ドレッサーの前で入念に口紅を塗っている美咲さんの後ろ姿。 クーラーの冷たい風が、先ほどの蒸し暑さを嘘のように感じさせる。 「抹茶オレ、買ってきました」 「うん。でも今から出かけるから適当に冷蔵庫置いといてくれる?」 「分かりました…」 もう要らないと言われるよりかは、良かったな。 鏡越しから見えるオレンジピンクの唇が、すごく潤っている。 花柄のミニワンピースや、ピンクのショルダーバッグにヘアカチューシャ、現代のお姫様のように可愛くて綺麗。
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