161人が本棚に入れています
本棚に追加
仕事を終えた後、皆が使い終わったお風呂に入ってから、物置倉庫だった離れの部屋に戻る。
路中、昼間に熱された草木を浴びせるように降っている雨に、安らぎを感じた。
夜の静けさに奏でられる雨音に、湿った土の匂い。
おぼろげな視界が、幻想を見せてくれる。
重たく、ギリギリと音を立てる古い戸を引くと、ダンボールや山積みになっている読まれなくなった本が目に入ってくる。
その一角に敷かれた二畳分の畳。
その上で布団をかけて横たわっているお母さんは、枕元に置かれたランプの下で本を読んでいた。
「お疲れ様、今日はごめんね」
「うん、大丈夫。体調はどう?まだ咳ひどい?」
「もう大丈夫よ、明日には働けるわ」
「もうすぐ私も夏休みに入るから」
「いいのよ、気にしないで。それより明日からまた学校なんだから早く寝なさい」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
錆びれた梯子を登って、自分の空間スペースへ。
ロフトと言ったら聞こえはいいけど、正式には屋根裏部屋。
それでも自分なりに、綺麗に掃除をして、好きな空色で統一している。
溜めたお小遣いでちょくちょく揃えた白の家具たちも、全部お気に入り。
最初のコメントを投稿しよう!