小窓の向こうに、眩しい君

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仕事を終えた後、皆が使い終わったお風呂に入ってから、物置倉庫だった離れの部屋に戻る。 路中、昼間に熱された草木を浴びせるように降っている雨に、安らぎを感じた。 夜の静けさに奏でられる雨音に、湿った土の匂い。 おぼろげな視界が、幻想を見せてくれる。 重たく、ギリギリと音を立てる古い戸を引くと、ダンボールや山積みになっている読まれなくなった本が目に入ってくる。 その一角に敷かれた二畳分の畳。 その上で布団をかけて横たわっているお母さんは、枕元に置かれたランプの下で本を読んでいた。 「お疲れ様、今日はごめんね」 「うん、大丈夫。体調はどう?まだ咳ひどい?」 「もう大丈夫よ、明日には働けるわ」 「もうすぐ私も夏休みに入るから」 「いいのよ、気にしないで。それより明日からまた学校なんだから早く寝なさい」 「うん、おやすみ」 「おやすみなさい」 錆びれた梯子を登って、自分の空間スペースへ。 ロフトと言ったら聞こえはいいけど、正式には屋根裏部屋。 それでも自分なりに、綺麗に掃除をして、好きな空色で統一している。 溜めたお小遣いでちょくちょく揃えた白の家具たちも、全部お気に入り。
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