ぶどうジュースの物語

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期末テストも、終業式もあっという間に終わって。 待ちに待った夏休みが、やって来た。 でも休みだからと言って、寝坊助が出来るわけでもなく、やる事は山ほどある。 例えば今、朝一に美咲さんが毎朝飲むミネラルウォーターが切れている事に気づいて、慌ててコンビニに来たこととか。 無かったらまた癇癪を起こされるのは、今までの経験でよく分かっている。 5本目を手に取り、カゴを持って来ていない自分の馬鹿さ加減に呆れていた時、ふと近くに人の気配を感じた。 横を見ると、野球のユニフォームに身を包んでる見慣れた人。 「たっちゃん」 「おう」 小中同じ学校だった幼馴染の速水 達男。私の唯一ともいえる男友達。 以前会った時よりも、肌は黒く焼けていて、体格もより一層逞しくなっている。 髪型は昔と変わらない野球刈りで、見るからに野球球児って感じ。 近づいて来た彼に、違和感を感じて、思わずたじろいでしまった。 「…身長、そんなに高かった?」 「また伸びた」 ああ、なるほど。 だって去年まで同じぐらいだったのに。 男の子って伸びるの早いなぁ。
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