68人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
マジマジと見上げていたら、たっちゃんは何も言わずに何処かに行って。
すぐに戻って来た彼が持っていたのは、コンビニカゴ。
顔色一つ変えることなく、それを渡してくれた。
「使え」
「あ…助かる、ありがとう」
たっちゃんはずっとこんな感じ。無愛想で、無口。
でも本当はすごく優しくて、こうした気配りも、いつものこと。
「たっちゃん、今から部活?」
「ああ、朝飯足りなかったから適当にパンでも買って行こうかと思って」
「そっか、部活毎日だよね。熱中症とか気をつけてね」
「お前の方こそ気をつけろよ」
「えっ?」
「熱中症とか」
「あっ、うん。ありがとう」
「じゃ、行くわ」
頭をぽんぽんとしたたっちゃんは、そのまま持っているパンを持ってレジに向かった。
お別れの時は、必ずと言っていいほどするこの行為は、彼の習慣みたい。
高校に入ってからはあまり会うこともなくなったけど、別に小中もベッタリするような仲でもない。
近所のマンションに住んでいるため、こんな風に偶然に会えば、ちょっと話をするだけだけど、私にとってちょっとしたお兄ちゃんみたいな感じで。
なんか、…落ち着く。
最初のコメントを投稿しよう!