68人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「ちょっとっ!なんでこれ伸びてるのよっ!」
罵声と共に、勢い良く顔に投げつけられたTシャツ。
ミネラルウォーターも買えたし、今日は平穏に過ごせると思っていたのに。
「この生地はあれだけ手洗いでしてって言ったじゃない!」
「…すいません」
「もうこれ高かったのよ?!しかも一回しか着たことないのに!あー、もう最低っ。今日これ着ようと思ってたのに!」
すごい剣幕で声を荒げる美咲さんは、化粧も髪型も支度し終えていて、上だけ家着のままだった。
これを洗ったのは多分、竹中さん。
分けていた物の中から黒色だからと、取り出したに違いない。
すぐに洗うか、事前にお母さんと竹中さんに言っておけば、こんな事にはならなかった。
通達を怠り、後回しにしてしまった自分に問題がある。
「すいませんでした、次からこんな事がないよう」
「次があったら困るわよ!」
「…すいません」
「全部手洗いにさせてないだけ有難く思いなさいよ!本当、なんの為に雇われてんの?」
「…すいませんでした…」
「もう要らないから適当に着といたら?どうせ自分じゃ買えないだろうし」
お礼なんか、言いたくもない。
込み上がる怒りを拳で耐えて、そのまま一礼をして部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!