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「あら、坊ちゃんまた来たんですか?本当に雫ちゃんが好きね」
「当たり前だろ」
「はは」
あれから大志くんは相変わらず奥様に隠れて、会いに来てくれて。
あの時はごめん、と思い出す度に、謝って来てくれていた。
そんな大志くんを無下には出来ず、見つかったらまた怒られるんだろうなと思いつつも、やっぱり可愛さには勝てなくて。
こうしたちょっとの時間だけ、話をするようにしている。
「今日さっ、たけしがカブトムシ取りに行くって言ってて。俺も行きたいんだ」
「カブトムシかぁ。どこで採れるの?」
「俺も知らないんだ」
たまに大志くんが可哀想に思う時がある。
遊び盛りな男の子なのに姉の美咲さんは毎日お出かけ、奥様は勉強と習い事でしか話をしない、旦那様に至ってはあまり家に帰って来ない。
友達ですらも奥様に、口出しされてる始末だ。
多分すごく寂しいんじゃないのかなって思う。
「多分、公園とかにあるんじゃないかしら?」
「そうなのか?公園に居るのか?」
目をキラキラ輝かせている大志くんが、この時ばかりは小学生なんだと思わずにはいられなくて。
あまりの可愛さに、ちょっと笑ってしまった。
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