ぶどうジュースの物語

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「でも部活行ってて居なかった…」 …なんだ、良かった。 詰まっていた息を、やっと吐けた瞬間だった。 この前の事があってから、今、一番会いたくない人になっているのかもしれない。 部活をしていたのは初耳だけど、心底有難いと思った。 「坊ちゃん、それってお隣の古賀様の息子さんのことですよね?」 「そうだけど、なんだ。知紗は連れて行かないぞ」 忽ち険しい顔つきになった竹中さんは、身を屈めて大志くんの両肩に手を置いて。 同じ視線の位置に合わせた彼女は、ハタから見ても重々しい表情なのが分かる。 いつも温厚なだけに、少し身が強張るのは大志くんもだった。 「その方は、坊ちゃんが安易に遊びに誘っていい方ではありませんよ」 え…? どういう、こと? 「どういう意味だ?」 「旦那様がいないところで関わるのはおやめくださいね。もしも機嫌を損ねてしまった日には、取り返しのつかないことになりますからね」 「さっきから何を言ってるんだよっ」 怯えてしまった大志くんは、竹中さんの手を振りほどき、そそくさと私の後ろに隠れた。 それでも態度を崩さず、射抜くように大志くんを見つめる竹中さんの目つきは尋常ではないほどの真剣さ。 何を言いたいのか、私にも全然分からないんだけど…。
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