可笑しな頼まれ事

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食べ終わるのを見て、また刺して渡して。 その度にお礼を言う彼の礼儀正しさと優しさに、言い表せない感情が込み上がって、胸がいっぱいになる。 「これ作んの、大変だったろ。ありがとうな、マジで美味しい」 今までご飯を作っても、何かをしても、それが全部当たり前のような態度をされてきた。 こんな感謝をされることもなければ、美味しそうに食べてくれるのも大志くんぐらいで。 そんな私が作ったものなのに、こんなに言ってくれるなんて。 嬉しい、よりももっと深く、高揚した思いを噛み締めた。 「美咲、料理上手かったんだな。初めて知った」 【スイカ、今食べる?】 話を変えた。 美咲さんが包丁を持つのは、家庭科の調理実習の時くらいだと思う。 でもそんな事は、口が裂けても言えないから。 「食べる食べる」 奏人くんって、たまに無邪気な子供みたいになる。 可愛くて、なでなでしてあげたいような。 …あ。 大志くんに似てる、かも。 そう思ったら、笑いそうになって。 必死に堪えて、一口サイズに切ったスイカを果物用フォークに刺して、再度彼に渡した。
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