可笑しな頼まれ事

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車内で旦那様に言われたのは、毎日夕方以降に行くこと。 奥様には、変な気を起こしたらただでおかないこと。 頷くことしか出来ない私は、憤りと悔しさでいっぱいだった。 都内でも有名な大きな病院に着き、彼達に連れられ、辿り着いたのは古賀 奏人のネームプレートがかかってある病室の前。 入院している事実を突きつけられ、足が竦む。 今、彼はどういう状況なのか知れるというのに、怖くて見たくない。 「今から喋るなよ」 小声で話す旦那様の険しい目つきにまた頷いて、ノックされたドアを見つめることしか出来ない。 コンコン 「はい、どうぞー」 久しぶりに聞いた奏人くんの声は、以前と変わらない明るいもの。 大事に至っていないのだと分かり、重たかった肩の荷が下りた気分だったが、次に目に映った光景に言葉を失った。 「えーと、どちらさんですか?」 ベットから起き上がっている彼の目は包帯が巻かれていたのだ。 顔にも大きな絆創膏が貼られ、なんとも痛々しい姿に、立ち尽くすしかなかった。 「正裕おじさんだよ、調子はどうだい」 「あ、おじさん来てくれたんですか、ありがとうございます。調子は相変わらずです」 「事故ったのを聞いて美咲が居ても立ってもいられなくてね、今日連れてきたんだよ」 事故…なんだ。 ここで初めて、彼が入院している理由が分かった。
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