可笑しな頼まれ事

16/32
前へ
/32ページ
次へ
「あれ?どした?」 手が止まってしまっていた事に気づいて、慌てて突つくと、彼はまた向日葵が咲いたような笑顔を向けてくれた。 でも、何を話そう。 たっちゃん以外で男の人と話したことなんて、ほとんど無い私。 ましてや相手が奏人くんだから、余計に分からなくなる。 とりあえず、何かしてあげなきゃだめなんだよね。 【何か食べたいものとかある?】 「気使わなくていいよ。紀子とか大量に物買ってくるし」 そう言われたら、どうしようもない。 うーん、何が出来るんだろう。 【じゃ、好きなものは?】 「好きなもの?そうだなぁ、スイカとか?肉とか?」 肉って。 笑いそうになって、すぐに口を押さえた。 奏人くんって本当に真っ直ぐというか、裏表がない人だなぁ。 【肉って例えば?ステーキとか?】 「全般好きだよ」 【病院食、お腹いっぱいになる?】 「あー、でも野菜ばっかで結構物足りないかも」 できること、見つけた。 明日は肉料理を作ってこよう。 あとスイカも切ってこよう。 「美咲って、夏休みとか何してんの?」 何してるって、買い物か遊びに行ってるかぐらいしか思いつかない。 でもそんな事を言っていいのかな。 『美咲の顔に泥を塗るような事は絶対にしてくれるなよ』 …だめだな。 印象が悪くなっちゃう。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加