可笑しな頼まれ事

17/32
前へ
/32ページ
次へ
【歌のレッスンとか、夏休みの宿題したりとか。あとは友達と遊びに】 「充実してるな、美咲らしいよ」 少し修飾しているんだけどな、でもこれでいいんだよね。 それなのに何故かまた胸の奥が、少し疼いて。 少しばかり、息苦しさを感じた。 「宿題、もうやった?美術のあれ、進んでる?」 美術のあれって、この前言ってたやつだよね。 そういえば美咲さんも美術とってたな。 進んでるのかなんて分からないけど、適当に言っておこう。 【ちょっと彫り始めてるよ】 書きながら、はたと気づいた。 今の奏人くんじゃ、彫れないんだ。 【代わりに、やってあげようか?】 「えっ?いや、それは悪いよ。あれ超面倒くさいし」 【いいよ、夏休みそんなにする事ないし】 これぐらいしか、私に出来る事なんかない。 さすがに奏人くんのお母さんも、これは出来ないはず。 「二つもするのは大変だって。それに女の子なんだし、彫刻で怪我でもしたら」 【大丈夫だよ、気をつけるから。木は家にあるの?取りに行ったらいい?】 「…なんかごめんな。でも本当にいいの?」 【うん、まかせて】 「木は紀子に持って来るように頼んどく。目が治ったら、絶対お礼するから!」 【そんなのいらないよ】 むしろ、これぐらいさせて欲しい。 罪滅ぼしにも、ならないけれど。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加