可笑しな頼まれ事

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奥様から帰ってこいというメールが入り、奏人くんにまた来ると言って、病院を後にした。 あんな風に二人で普通に話しているのがすごく不思議に感じて。 それと同時に押し寄せる申し訳ない気持ちに、息が詰まる思いだった。 家に着くなり、リビングで待っていたのは旦那様と奥様、そしてパックをしている美咲さん。 「どうだった?」 私の顔を覗いてきた旦那様の心配そうな顔は、初めて見た。 それほど奏人くんのこの事を重要視しているのだろう。 「えと、声は、出してません」 「そんなの当たり前でしょう。そんなんじゃなくて、報告とかないの?何か頼まれたとか。ちゃんと逐一、美咲やあたしに言ってくれないと後々、話が噛み合わなくなるでしょう」 「…すいません。頼まれたというか、あの、美術の宿題をすることになりました」 「あ、あの巻貝のやつ?あたしのも頼もうと思ってたし、丁度良かったわ」 「え?」 「一緒に作ってよ、似てたらあたしが作ったってなるでしょ?」 宿題を代わりにさせられるのは、慣れてる。 でも彫刻はすごく時間がかかるのに、それを二つもだなんて…。 言いたい事は山ほどあるのに、新しくなっている夏仕様の花柄ネイルを眺めながら、平然と言う彼女に反論できる筈がなかった。
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