可笑しな頼まれ事

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「それで来なかったの?」 「うん…」 今日は夏休みに入って、バイト漬けの毎日を送っていた有ちゃんとの初遊び。 と言ってもお茶をするだけだけど、すごく楽しみにしていた。 アイスカフェラテの入ったグラスをストローでかき混ぜる有ちゃんは、ため息を一つついて、口を開く。 「怒ってる線が濃いわねぇ」 「やっぱり、謝りに行った方がいいかな…」 話しているのは、あの晩、来なかった奏人くんのこと。 大志くんは落ち込むは、奥様には問い詰められるはと本当に大変だった。 あまり家の事を話さない私だけど、さすがに今回の件は誰かに話さなくては息が詰まって仕方なかったのだ。 「謝ったところで、じゃない?」 「もう手遅れってこと?」 「そりゃあね」 グサリと突き刺さるが、正直に言ってくれた方が有難い。 しかしまだ旦那様や奥様からお咎めがないってことは、奏人くんは何も言っていない証拠。 それでもういい筈なのに、やっぱり気になる。 あれから小窓を覗いても出てこないし、顔すら見てない。 そんなこんなでもう4日が経とうとしていた。
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