可笑しな頼まれ事

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二回目となる訪問に、心臓がバクバクと大きな音を立てている。 かれこれドアの前で5分ほど立ち尽くしている私は、ハタから見たら不審者でしかない。 昨日、夕方以降には誰も来ないからと旦那様に再度言われたものの、誰かと鉢合わせをしてしまったらどうしようと気が気ではない。 でもずっとこんな所に居ても仕方ないよね。 声もしないし、多分誰もいないはず。 深呼吸の後、自分に喝を入れて、ノックをした。 「はいよーっ」 ぷっ。 奏人くんの陽気な応答に、力んでいたのが馬鹿らしく思える。 やっぱり明るいなぁ。 本当、太陽みたい。 ドアを引くと、見えていないのに人懐っこい笑みを浮かべている彼。 なんか、可愛い、かも。 「どちらさん?」 あ、どうしよう。 なんて伝えたらいいんだろう。 咄嗟に出た行動は、ドアをノック。 そうすると彼は、並びの良い白い歯を出して、ニカッと笑った。 「美咲か!」 コン コン 分かってくれて、良かった。 とりあえず、これからもこうしよう。 「暑いのにありがとうな。とりあえず座りなよ」 「は」 いけないっ。 反射的に声を出してしまい、慌てて彼を見ると、きょとんとしたように口が半開きになっている。
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