可笑しな頼まれ事

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「うまー」 美味しそうに食べるなぁ、なんて思いながら眺めてたら。 ポトッ 「あっ」 丁度フォークに刺さっているところから、少しサイズの大きいスイカの半分が布団に落ちてしまった。 「うわー、どこに落ちたんだ」 「まっ」 手探りに布団を触る彼を止めようと、またしても声を発してしまって。 しまったと思った時には、彼の手が止まった。 「声…」 どうしよう。 本当どうしよう。 バレちゃう。 そうなったら、もうクビになっちゃう。 緊迫した空気が流れる中、加速する鼓動。 どうしたら良いのかも分からず、弁解も出来ずに、固まってしまう。 「潰れたせいでちょっと変わったな」 安堵から足の力が抜け、崩れるように地面に座り込んでしまった。 …良かった。 もう本当に心臓に悪い。 次からガムテープとかで口を塞いだ方がいいのかもしれない。 一先ず立ち上がり、急いで落ちたスイカを探すと、布団の向こう側に転がっている。 すでに白い布には浅いピンク色の染みが出来てる。 ああ、もう私のバカっ。 なんでもっと小さく切らなかったのっ。 これ以上布団を汚されたら困ると、必死に手を伸ばす。 あと、もうちょい…よしっ。 取れたと同時に、左耳元から吐息を感じた。 「…えと」 え? 横を見た瞬間、心臓が止まった。
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