可笑しな頼まれ事

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「それにしても古賀が、あの古賀自動車の坊ちゃんなのかぁ。金持ちだとは聞いてたけど、本当すごいわ」 「…うん」 「容姿は認めないけど、品行方正の学術優秀でど偉い金持ちときたらそりゃ女もあんなに騒ぐわけだ」 「学術優秀って奏人くん、頭いいの?」 「あたし程ではないけど、常に学年20位には入ってるわよ」 「えっ」 失礼ながら奏人くんってやんちゃそうな性格だし、成績の方はそんなにと勝手に思っていただけに、驚きを隠せなかった。 20位以内って、すごい賢い人なんだ。 「大蔵が言うにはかなりの努力家らしいよ。それで良く言われてるもん、見習えとかね。うるさいっての」 「そう、なんだ」 大蔵先生は学年主任で、有ちゃんに目をかけている化学担当の先生。 努力家ってことは、有ちゃんみたいな天才肌じゃないってことなのか。 「金持ちならそんなに頑張らなくてもいいのにね。まぁそこが教師やら女子の好感を買ってるんだろうよ」 「本当だね…」 "知恵は宝石よりも尊く、あなたの望む何物も、これと比べるに足りない。" ずっと自分に言い聞かせている言葉。 だから頭が悪いなりに、頑張って勉強している。 いつかはお母さんに楽をさせられると信じて。 それなのにそんなに恵まれてもなお、頑張る彼が本当に出来た人間だと感慨深くなって。 もっと自分も頑張らなきゃと、思わずにはいられなかった。
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