89人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもあたし、なんか好きじゃないわー、古賀」
嫌そうに話す有ちゃんは頬杖をつき、ぐにゃっと歪んでいる顔が更に嫌悪感を露わにしているようだった。
「なんで？…すごく、いい人だよ」
明るくて、こんな私にですら、優しくしてくれるのに。
本当にあんな出来た人は、なかなか居ないと思う。
「そのいい人っぷりが胡散臭いのよ」
「へっ？」
「だからなんて言うの？出来すぎてんのよ、出木杉くんみたいに。あんな奴本当にいるの？って疑いたくなるようなね。絶対なんか裏がありそうだし」
有ちゃんって本当に、疑い深いというか天邪鬼というか。
呆れて、物も言えない。
「あんた、どうせあたしが天邪鬼とか思ってんでしょ」
「…そんなことは」
「いつか化けの皮が剥がれた時が来るわよ」
鼻息を鳴らして果敢に言ってのけたが、失礼にも程が有る。
そんな奏人くんを化け物みたいに…本当に恨みでもあるのだろうか。
「有ちゃんは、嫌いなの？」
「うん、多分嫌いだわ。見てて無性に腹立たしいの、分かる？」
ごめんなさい、全然分からないです。
でも鋭い睨みにそんなことが言える訳がなくて、おもむろに頷いた。
「後から痛い目にあわないためにも、あんな上っ面に騙されちゃだめよ」
「え？…何の話？」
「だから好きなんでしょ？」
はいっ？！
最初のコメントを投稿しよう！