可笑しな頼まれ事

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いつ、どこで、私が好きってなったの? 何度も瞬きをしていると、有ちゃんはズズッとカフェラテを吸い込んで、一息ついた。 「男の話なんかした事がないあんたが、会って初っ端に相談してきたって、そういう事でしょ」 「それは怒らせてしまったからで」 「どうでも良かったら気にしないわよ」 「それはたくましい有ちゃんだからこその考え方だよ。怒らせて気になるのは普通なの、誰とか関係なくて」 「とにかく!上辺に騙されんじゃないわよっ!」 本当に奏人くんは、普通にいい人なのに。 大志くんのカブトムシにも付き合ってくれて。 使用人だって分かってても、私にも優しくしてくれて。 同じお金持ちの美咲さんとは大違いなのに。 温かさも、寛容さも、優しさも、他の誰よりもある人なのに。 でもきっと、奏人くんの良さは直接話してみなきゃ、分からないのかもしれない。 だからもう、何も弁解はしなかった。 それからすぐに忙しなく薬局のアルバイトに向かった有ちゃんと解散した。 奏人くんについての解決策は何一つ得られなかったが、久しぶりに気心の知れる友達と会えて、ちょっと息抜きが出来たのは確かだった。
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