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家に帰り、ラフな格好に着替えてから、本宅に行くと玄関には旦那様の皮靴がある。
夕方なのに珍しいな。
物でも取りに帰って来たのかな。
晩御飯の支度をしにキッチンに向かおうと、リビングの扉を開けた瞬間、身体が強張った。
奥様に旦那様、美咲さんが勢揃いでソファに腰掛け、見るからに険悪な雰囲気を漂わせているからだ。
入り口から正面に座る美咲さんは、私を見るなり、何か閃いたように膝を叩いた。
「そうよ!雫にやってもらえばいいじゃない!」
えっ。
いきなり指名され、一体何のことかさっぱり分からない。
しかし説明してくれる人は誰一人と居ず、旦那様は呆れた様子で眉間を押さえた。
「お前は何を言ってるんだ、バレたらどうするつもりなんだ」
「いけるって!とにかくあたしは無理よ、ねぇママ?!」
「そうよ、美咲にはちょっと厳しいわよ。今まで洗い物すらした事がないのに、人の世話だなんて…」
人の、世話…?
次から次へと発される謎の単語に、首を傾げる他なかった。
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