可笑しな頼まれ事

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お母さんを見ると、悔しそうに唇を強く噛み締めてる。 「ねぇ、お母さん。さっきから何の話を」 『雫ー、ちょっと来なさい』 奥様の声に手を離したお母さんは、私に行くように軽く背中を押して。 苦渋に満ちた表情に、心がぎゅっと締め付けられた。 意味が分からないままにリビングに行くと、旦那様は改まった様子で手招きをしている。 恐る恐る彼の前まで足を進め、美咲さんも奥様も何か吹っ切れたような顔をしている。 「雫、ちょっとお前に頼みがあるんだ」 「頼み、ですか?」 「お隣さんの古賀 奏人くんって知ってるか?同じ学校の」 「え?」 急に言われた彼の名前に、思わず声を発してしまった。 …なんでここで、奏人くん? 「その子が今入院してるんだ」 「えっ?」 耳を疑った。 入院…って。 なんで?なんで入院してるの? 病気で、ってこと? 大丈夫なの?今はどういう状況なの?
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