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昼過ぎ、洗濯物を終えた頃に連絡が入った。
お母さんに一声かけて、家を出ると制服姿で大きなスポーツカバンを肩にかけているたっちゃんが居て。
手に持っていた紙袋を渡してくれた。
「ありがとう、すごい嬉しい」
「むしろ食べてくれて助かる」
「今から部活だよね?」
「おう」
日差しに反射した額の汗が、光っている。
学校に行くのに、ここまで来るのは遠回りなのに。
「本当、わざわざ来てくれてありがとう…」
手ぶらで来てしまったから、拭うものさえ無い。
私って本当に気が利かないやつだ。
自己嫌悪に陥っていると、頭の上から重圧を感じて。
顔を上げると、たっちゃんの黒く焼けた大きな手が乗っていた。
「申し訳ないとか思うな」
表情など一つもない、仏頂面。
抑揚もない、声のトーン。
それなのに、優しさが沁みて、なんてお礼をしたら良いのかも分からない。
ガーーーーー
いきなり鳴り出した機械音。
反応した私達は、同時にそちらを見やる。
お隣さんのガレージのシャッターが、上がっていた。
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