初恋の色と蜂蜜の意味

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たっちゃんに貰った紙袋を見た彼女は、首を傾げて。 「なにそれ?」 「あ、えと、たっちゃんが持って来てくれたんです」 「ふーん。相変わらず仲良いのね」 小学校は違えど、登校を一緒にしていたたっちゃんのことは、彼女も少しは知っている。 興味の欠片もないといった態度で、すぐに話を続ける。 「ポカリ飲みたかったのに雫いないんだもん。一人で行こうと思ってたけど丁度良かったわ」 …そういうことか。 「あと、リーホのみかんゼリー箱で買ってきて。奏人くんのお見舞いに持っていくから」 財布から万札を取り出して、私に渡した彼女。 そのまますぐに踵を返すその背中に、何も言うことは出来なかった。 リーホとは有名な洋菓子店。 …まだ近くのところで良かった。 急いで倉庫へ戻り、葛まんじゅうを冷蔵庫にしまって。 日焼け止めを軽く塗って慌てて家を出たのはリーホの看板商品、みかんゼリーがすぐに売り切れてしまうこと。 好きなのかな、なんて、私が思うことじゃないのに。 無駄に駆け足になっている自分は、…きっと遅いと責められるのが怖いだけ。
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