初恋の色と蜂蜜の意味

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運良く残りわずかの、5個箱入りを購入できた。 でもその時にはもう全身汗だくで、束ねている髪の毛まで湿っていて。 お店の人にも、バス乗客のおば様達にも、怪訝そうに見られた。 見苦しいものをと申し訳なく思いながらも、安堵の気持ちが勝る。 お見舞いの品を、ちゃんと買えた。 使命を果たした達成感に浸りながら、家路を急いだ。 「雫っ!どこに行ってたんだっ」 家に入るなり、出迎えるように走ってきた大志くん。 頬を膨らませて、いかにも拗ねていることを言いたいようだ。 「ちょっとお使い頼まれてて」 リーホの紙袋を見て、ぱっと目を輝かせて。 一目散に、手を伸ばしてくる。 「みかんゼリーか?!俺食べたいのだ!」 「あっ、違うの。これはだめなの」 ピタリと静止した彼は、眉をひそめた。 そしてすぐに口を尖らせて、納得のいかない表情を浮かべる。 「なんでだめなんだ、みんなで食べるやつじゃないのか」 「これ、美咲さんがお友達さんに持って行くものなんだよ」 昨日、口止めされたばかり。 嘘はついていないけど、それでも大志くん、ごめんね。
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