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「雫、その歌はなんだ?」
美咲さんのミニスカートを干している横で、不思議そうに見上げる大志くん。
すぐ側のお母さんがくすりと笑った。
「それしか歌わないから、あたしまで覚えちゃったわよ」
「え?そんなに?」
「もう何年も口ずさんでるのによく言うわよ」
「ああ。雫の鼻歌といえば、それだぞ」
…どうしよう。
そんなに歌ってたなんて全然、自覚なかった。
私、大丈夫なのかな…。
ちょっと本気で、心配になってきた。
「なんて曲なんだ?」
「えと、…知らないの」
「なんだそれは。良い歌だから調べようと思ったのに。歌手も分からないのか」
「…うん」
「どこで知ったのだ?」
「全然覚えてない…」
多分知ったのは、すごく昔、かな?
だから、本当に記憶にない。
正直、歌っているのがサビか何なのかも分からないくらいだ。
「あれは確か小学校の高学年かしらねぇ。それまで口ずさんだ事すらなかったから驚いたわぁ、懐かしいわね」
「そう、なんだ」
さすがお母さんだな。
私以上に、私の事を覚えてくれている。
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