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「きょ、奥様に、その、代わりに…アピールしろ、って、…言われてっ」
「はぁ」
眉を寄せて、意味が分からないと言わんばかりに思いっきり首を傾げた彼を、ぼやけた視界からでも伺えた。
「私のせいで、…っ、おこらせ、てっ、それで、アピール…しなきゃって」
「えっ?それで何かしたの?」
「そ、その…抱き、ついて…」
蘇るあの光景。
ハタから見た自分は、どう見ても痴女まがい。
もうタイムスリップして、あの時点に戻って自分を叱咤したい。
もう思い出しただけで、死にそうだ。
ずっと相槌してくれていたハルさんも、ついには黙り込んでしまった。
それほど自分がしでかしてしまった事の重大性に、悔やんでも悔やみ切れない。
「くっ」
…く?
おかしな感嘆詞に彼を見やると、口とお腹を手で押さえて、身体がわなわなと震えている。
そして目尻には、涙粒が浮かんでいる。
あれ、れ?
これって、もしかしなくても
「ぶはははははっ!」
我慢の限界を迎えたのか、張り裂けんばかりに豪快に笑い出した。
…なんで。
人のこんなにも深刻な問題にどこに笑うところがあったのか、本当、誰か教えて…。
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