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「ごめんじゃなくて、なんでこんな事したのかって聞いてるんだけど」
更にきつく、責めたてるような言い方に身体は強張る。
なんでそんなに怒るの…。
普通にベタベタするくらいに、慣れてるんじゃないの…。
目一杯の抵抗も、心に留めて。
今度こそは怒らせないよう慎重に、十分に考えてから文字にしていく。
【怒ってるっぽかったから。嫌われたくなくて】
はっ、と失笑なのか苦笑なのか判らない笑い。
でも呆れているのは、見なくても分かる。
「…なにそれ」
飽きた口が塞がらないと言いたげに、また乾いた笑い声が聞こえて。
「誰にでもしてんの?」
え…なに、その言い方…。
冷め切ったその言葉の意味を必死に呑み込もうとしていたら、
「…っ!」
掴まれていた右腕が、ぐいっと引っ張られる。
あまりの力強さに、ベッドに倒れそうになる身体を左手でなんとか支えたが、膝に乗せていた鞄は無残にも床にずり落ちていた。
何が起こっているのか、全く把握できない。
握られている手首が痛くて、見上げた彼の顔に一切の表情が見受けられないことを除いて。
首を傾げた彼は薄っすら微笑んでいる。
「嫌われんの、嫌なんだよな?」
背筋が凍るような、冷たい嘲笑に目を逸らせなくて。
ただ本能は逃げろと雄叫びをあげている。
手を解こうとするものの、ビクともしない。
…怖い。
全神経がそう訴えてるのに、力が抜けて行く。
「じゃ、ヤラせてくれんの?」
奏人くんと似つかわしくないその態度に、その発言に
呼吸の仕方すら、忘れてしまった。
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