甘酸っぱい謎に悪魔の誘惑

25/37
前へ
/37ページ
次へ
カクン カクンとゼンマイ式のように顔をゆっくり上げる。 育ちの良さそうな雰囲気を漂わせて、如何にも紳士らしい微笑みを浮かべている、あの時のお兄さん。 なんでよりによって、この人に出くわすのだろう…。 追い打ちをかけられたかの如く、一段と気分は沈む。 「こんな所で泣いているなんてすごいね。もしかして精神科に連れてけってこと?」 ここは病院の角っこ。 言いたいことは分からなくもないが、それにしても酷い言い草だ。 「…放っといて下さい」 「ははっ、今日はやけに反抗的だね。お兄さんが子守歌でも唄ってあげようか?」 「い、いりませんっ」 なんで会って二回目のこの人に、こんなに馬鹿にされるんだろう。 そもそも、なんで此処にいるの? 『なんで君にアイスを買うかとかさ』 …あ。 そうだった。 この人、私のこと知ってるかもしれないんだ。 それで悶々としてたの、すっかり忘れてた。 もしかしてここで会ったのも、偶然じゃない可能性も…? ぞくっと、悪寒が走る。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加