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カクン カクンとゼンマイ式のように顔をゆっくり上げる。
育ちの良さそうな雰囲気を漂わせて、如何にも紳士らしい微笑みを浮かべている、あの時のお兄さん。
なんでよりによって、この人に出くわすのだろう…。
追い打ちをかけられたかの如く、一段と気分は沈む。
「こんな所で泣いているなんてすごいね。もしかして精神科に連れてけってこと?」
ここは病院の角っこ。
言いたいことは分からなくもないが、それにしても酷い言い草だ。
「…放っといて下さい」
「ははっ、今日はやけに反抗的だね。お兄さんが子守歌でも唄ってあげようか?」
「い、いりませんっ」
なんで会って二回目のこの人に、こんなに馬鹿にされるんだろう。
そもそも、なんで此処にいるの?
『なんで君にアイスを買うかとかさ』
…あ。
そうだった。
この人、私のこと知ってるかもしれないんだ。
それで悶々としてたの、すっかり忘れてた。
もしかしてここで会ったのも、偶然じゃない可能性も…?
ぞくっと、悪寒が走る。
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