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いや、それよりもだ。
聞いていいことじゃないのは百も承知だが、あんな苦しそうに咳き込んでる姿を目の当たりにしたらやっぱり止められなかった。
「あの、重症って、そんなに酷いんですか…」
「うん、結構ね。何せここだから」
「えっ…」
困った様に指差したのは、左鎖骨の少し下のところ。
まさかの、心臓だった。
…ってことは心臓病…?
淡々としている彼に聞いておいて、どう返答したら良いのか分からなくなった。
「…すいません」
つくづく自分は、後先考えずに物事を話してしまうのだと省みる。
だからあんなにも…
『嫌われんの、嫌なんだよな?』
刺すような鼻奥の痛みから気を逸らしたくて、手の甲でごしごしと擦る。
「その仕草はないでしょ。仮にも女の子なんだし」
「あ、…すいません」
ああ、何やってんだろ。
病気のこと聞いといて、違うこと考えてるなんて最低すぎる。
もう自己嫌悪にしか陥れない中、眉間にぴとっと何かが着く。
目を少し寄せて見ると、それはお兄さんの人差し指。
「今の歳で眉間に皺作ってたら後が大変だよー。ぷはっ」
病気の事を知らなかったら、呑気でいいなとか、思ってたけど。
深刻そうな病気を抱えてもなお、こんな朗らかに笑える彼がすごいなと心から尊敬した。
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