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「ねぇ、お腹空かない?」
「えっ?」
「まぁ、どっちでもいいから付き合ってよ」
有無を言わせず、前を横切った彼から微かなグリーン系の香りがした。
このまま無視して、帰ってもいい。
でもやっぱりそういう事が出来ない私は、ちゃんと一言断りを入れてからと後を追いかける。
「すいませんが、私付き合え」
歩きながら、顔半分こちらに向けた彼はニッと笑って。
「だーめ。君がいないと行けない店だから」
「へっ?」
「あと変な心配とかしないでね。襲うほど女に困ってないから」
な、なんて自信家…。
それでも非の打ち所がない外見をお持ちなので、何も言い返せない。
って、そうじゃなくてっ。
「私、行かな」
ピッ
目の前に止まっている車のヘッドライトが二回目点滅した。
よく見たら、この間の車だった。
「はい、乗った乗ったー」
私を見ることなく、ドアを開けて中に入っていくお兄さんは人の話をまるで聞いていない。
今、何時なんだろう。
ひとまず時間を確認しようと、鞄からケータイを取り出すとメールが入っていた。
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