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『世界で自分が一番不幸だとか思ってんでしょ?』
あの凍りつくような目つきに、身震いするような口調。
心を見透かされている気分になって、言い返せなかった。
否定する言葉が、見つからなかった。
でも何故、あんなに断定的に言えるのか。
私の家の事まで知っている、とか…?
一瞬にして、鳥肌が立った。
…そんな筈はない。
そんな怖い事、あるはずがない。
知らない人に自分の事を知られているなんて、本当に不気味でしかない。
だからそうであってほしいと、半ば願いに近いのかもしない。
次第に頭はまた重たくなり、眉間に鈍く疼く。
これが俗に言われる、知恵熱ってものなのか。
子供がかかるものだった筈なんだけどな…。
そんな自分に呆れていると、すぐにお母さんは薬とお水を持って、戻ってきた。
白い小さな錠剤を二粒を喉に流した私を、慈しむような目を向けて。
「奥様には、もう言っておいたからね」
「え?」
「古賀くんのお見舞い。だから今日は美咲さんが行くって」
「…そう、なんだ」
移しちゃ、いけないのは分かってる。
でも美咲さんが行くと聞いて、途端に胸がぎしぎしと軋む。
「じゃ、戻るわね。ちゃんと寝とくのよ」
「うん…分かった」
布団を掛け直してくれてから、優しく微笑んだお母さんは仕事に行った。
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