甘酸っぱい謎に悪魔の誘惑

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「…なんで"ここ"に、私が居ないと来れないんですか」 「こういう如何にも子供って子を連れてたら向こうも、ああ、この子が食べたいんだってなるでしょ?」 さも当然のように意味不明な自説を語りながら、前の車に続いて列に並んだ。 ここは有名なハンバーガーチェーン店の、しかもドライブスルー。 「でも食べたいのは…」 「うん、俺。たまに無性に食べたくなんの」 「なんでまたドライブスルー…」 「店の油っぽい匂い、一番嫌い」 益々、意味が分からない。 地球人の私には、到底理解できないのも致し方のないこと。 だって彼はここではっきりと、宇宙人の脳みそを備えているって、証明してくれたから。 「で、何食べる?」 「あ、私は結構」 「ダブルチーズバーガーのセットを二つ、コーラで」 …無視、ですか。 さすがとしか、言いようがない。 自由気ままの俺様街道を真っしぐらな彼に、もうかける言葉も見つからなかった。 窓口に着いて、店員さんから受け取ったハンバーガーを、私にぽんっと渡して。 ケータイをかざして、ピッとお会計を済ませたその速さに、お財布を出す間もなかった。
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