甘酸っぱい謎に悪魔の誘惑

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皺があまりない白ワイシャツに象牙色のネクタイをしたイケメンが食べると、ファーストフードもなんだか高そうに見える。 いつか有ちゃんが言ってた"イケメンはなんでも割増"の意味が、分かってしまった。 でも個人的には奏人くんの方がカッコ良く…って何を考えてるんだ。 頭を横に振って、中に詰まった悲しい物を振り払っていたら。 「ぷっ」 …しまった。 盗み見にもならないけれど、チラッと見るとストローで茶色い炭酸を吸いながら、三日月の形をした目がこちらを向けられていた。 「い、頂きます…」 ごくりと喉仏が上下に動いてすぐに車内に響く、喜々とした笑い声。 身体中に刺さった感じがして、肩が縮む。 恥ずかしい、しかない。 泣いてる時といい、変な事をしてる時といい、なんでこんな所ばかり見られるんだ。 小さく息を吐いて、買ってもらったバーガーを咀嚼する。 久しぶりに食べたそれは、記憶していたものより、美味しくて。 昼前にうどんしか食べてなかった私は、この時初めて自分がお腹が空いていた事に気づく。
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