甘酸っぱい謎に悪魔の誘惑

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「…27ですか?」 「なに?なんか思い出そうとしてんの?」 「…はい」 「ははっ、何企んでんの?」 いや、それはこっちの台詞なんですけど…。 否定しないってことは、27歳で合ってるんだ。 私より10個以上の人なんて、会った事ある…? 向こうから見える大通りの行き交う車を尻目に、隈なく昔の記憶を洗いざらい調べているが、該当するような人は一人もいない。 もう考えても、仕方ない。 単刀直入に、聞いた方が早い。 「私のこと、…知ってますよね?」 「知らないよ」 「えっ?」 「だからどんなに思い出そうとしても無理だよ。会った事もないんだし」 あ、れ? さらっと、出端をくじかれた気分だ。 でも、もし会った事もないのなら、尚更可笑しい。 再度、あの時と同じ質問を投げかけた。 「じゃ、なんで…私のこと嫌いなんですか?」 コンビニの明るい看板を背後に、薄暗い車内。 それでも彼が一瞬、眉をしかめたのを見逃さなかった。
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