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「秘密って、言ったら?」
流れるように視線を私の移した彼、下から覗き込む瞳が微かに揺れている。
それでも挑発的に口角を上げた唇の真意が、全く分からない。
「…どうしたら、教えてくれるんですか」
「うーん。じゃ、泣いてる理由で取引しない?」
「え…?」
「あの時と、今日の理由。それでどう?」
なんでそんな事を、聞きたがるんだろう。
私の泣いてる理由を知って、何の得になるのだろう。
正直、言いたくない。
でも嫌われているのは何故なのかを解明しない限り、彼の正体を突き止められない。
「…分かりました」
「じゃ、そっちからどーぞ」
えっ。
もし言って、それでいつもの宇宙人節を発揮されたら
「大丈夫だって。ちゃんと言うから」
…さすが宇宙人。
読心術まで心得ていらっしゃる。
「気を取り直して、はい」
「…あの、私。すごく貧乏で、お母さんと一緒に住み込みで…働いてるんです」
惨め過ぎるこんな話を、会って間もない人に話すなんて初めてで。
軽蔑されるんじゃないかって不安に急き立てられて、口をつぐんでしまう。
「うん」
降ってきた穏やかで、寛容に満ちた声。
いつもおちゃらけた彼なだけに、少しばかり調子が狂う。
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