甘酸っぱい謎に悪魔の誘惑

37/37
前へ
/37ページ
次へ
「きょ、奥様に、その、代わりに…アピールしろ、って、…言われてっ」 「はぁ」 眉を寄せて、意味が分からないと言わんばかりに思いっきり首を傾げた彼を、ぼやけた視界からでも伺えた。 「私のせいで、…っ、おこらせ、てっ、それで、アピール…しなきゃって」 「えっ?それで何かしたの?」 「そ、その…抱き、ついて…」 蘇るあの光景。 ハタから見た自分は、どう見ても痴女まがい。 もうタイムスリップして、あの時点に戻って自分を叱咤したい。 もう思い出しただけで、死にそうだ。 ずっと相槌してくれていたハルさんも、ついには黙り込んでしまった。 それほど自分がしでかしてしまった事の重大性に、悔やんでも悔やみ切れない。 「くっ」 …く? おかしな感嘆詞に彼を見やると、口とお腹を手で押さえて、身体がわなわなと震えている。 そして目尻には、涙粒が浮かんでいる。 あれ、れ? これって、もしかしなくても 「ぶはははははっ!」 我慢の限界を迎えたのか、張り裂けんばかりに豪快に笑い出した。 …なんで。 人のこんなにも深刻な問題にどこに笑うところがあったのか、本当、誰か教えて…。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加