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「あー、腹いてー。ホント、青春だねぇ」
涙を拭う彼は、心底面白そうにしている。
おかげに涙も引っ込んで、平常を取り戻した。
「…馬鹿にし過ぎです」
「いや、だって何をしたのかと思ったらただ抱きついただけで…ぶっ!」
まだ笑い足りていないのか、またくくっと噛み締めた声が耳に入ってくる。
いい加減、恥ずかしくなってきた。
「これでも真剣、なんですけど…」
「うん、そうみたいだね」
さっきまで優しかった彼はきっとタイマー式だ。
制限時間が設けられているに違いない。
真面目モードは4分以内、とか。
「私、ちゃんと話しましたよ。次はハルさんの番です」
「えー、もっと聞きたい」
27歳にもなって、なんで可愛い子ぶれるのだろう。
でもちょっと様になってるから、笑えてしまう。
「言わないつもり、ですか」
「何その強気な態度。俺か弱い子の方が好きなんだけど」
「…そんなの知りません」
あなたのタイプじゃなくて、私を嫌う理由を知りたいのに。
なんでこうもはぐらかすのだろう。
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