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「なんでよっ」
彼の突然の申し出に驚いたのは、私だけじゃなかった。
納得いかないと言わんばかりに頬を膨らませるあかりさんは、地団駄を踏む。
「別に居ても」
「あかりちゃん、お茶でも行きましょう」
「そんな…おばさまぁ」
不貞腐れた彼女に困ったように笑いかけた紀子さんに申し訳なく思った。
「すみません…、本当」
私を横切る彼女に頭をさげようとしたが、全くこちらに目を向けることはなくて。
まるで私という人間がいないかのように、通り過ぎて行く。
あ…。
嫌でも気づいてしまったのは、怒らせてしまったということ。
謝ることすらまともに出来ないほどの、耐え難い罪悪感に打ちのめされた。
私は疫病神かもしれない。
いつも人に嫌な思いばかりさせている。
昨日は奏人くんを。
最後まで私を睨んだあかりさんと、最後まで私の顔を見なかった紀子さんを。
「…ごめんなさい」
心に纏わり付く後ろめたさに息苦しさを覚えて、彼の顔を見れない。
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