抱く、壮大たる夢

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こんな風にお礼なんか言われた事もなければ、されたこともない。 だからどんな反応をして、何を言ったらいいのか、全然分からない。 「すごく元気になったの。本当にありがとう」 全身を駆け巡る高揚とした気持ちの正体を、解ってしまった。 あの百貨店の時も、さっきも、今この瞬間も。 俺は喜ばれることに、"喜び"を、覚えてたんだ。 「…はい」 「えっ?」 飴を突き返した俺に、目をぱちくりとさせているだけで受け取ろうとしない。 ほんのり紅潮した鼻に、瞼も腫れているのに。 今まで見たどんな子よりも、可愛く見える。 「俺、甘いの嫌いだから、これはしずが食べなよ」 「でも…」 包み紙を開けて、半分だけ紅色の小さな水晶玉のような飴を覗かせる。 唸り声をあげるが、それを取ろうとする気配はない。 甘いの、好きなくせに…。 口元まで運ぶと、しずは渋々といった様子で親指と人差し指でそれを取り、口に入れた。 すると、とろけるような表情を見せて、ほくそ笑む目は垂れ下がってる。 「おいひー」 カランコロンと歯に当たる小気味良い音。 右頬にぷくっと飴玉の形を浮かべてる。 …ほら。 満足感と幸福感が、また一気にやって来る。
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