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家に帰って、相変わらずジョギングで汗だくの二人に加えて、何故か休みだった兄ちゃんも少し息が上がっていた。
でもそんな事なんて気にしてられなくて、フラついた足で部屋に向かった。
ダイブしたベッドの枕に顔を埋めて、泣きたいのか、悔しいのか、もう自分でも分からない。
『…あなたも働いてるの?』
あなた"も"って、なに?
この年で働いてる奴なんかいないだろ…。
『もう行くね。…ありがとう』
あの軽蔑したような視線が焼き付いて、頭から離れない。
ただ握り潰されたような胸の痛みが、緩むことを知らない。
…あんなしず、初めて見た。
「なんで俺、嫌われたんだよ…」
点々と鉛筆に刺された穴で書かれた"達男"の消しゴムに問いかけたところで、答えなんて何も返ってこない。
でも嫌われることをした覚えなんて一つもなくて。
もはや全てが不可解に感じたとき、乾ききった喉が悲鳴をあげる
そういえば何も飲んでなかったな…。
気怠い身体を起こし、一階に降りた。
微かに開いたリビングの扉を押そうとしたとき。
「誰か様子見てきてよっ」
「俺、パス」
様子見るって、一体何の話…?
そっと覗いてみるとソファに腰掛けてる兄ちゃんの横顔と、母さんとさっちゃんの後頭部が見える。
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