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「人魚姫みたいでロマンチックだったのにね…」
「は? 人魚姫?」
「だって歌を唄ってあげてたのよ? いつもこっそり隠れることしかできなかった子がよ? これも成長かしらねぇ…」
ちょっと、待って。
今、なんかとんでもない事を聞いてしまったような気がする。
"歌を唄ってあげた"
"こっそり隠れてた"
待って待って待って。
そんなの、身に覚えがあるどころか、さっき俺がしてた事なんだけど。
もしかして、今の話してるのって…
「でもまぁ苦労してそうだよね。あの年で家政婦してんだから」
え…?
耳に入ってきたのは、聞いたことのない単語。
今まで感じた事もないような激しい衝撃に、身体が動かない。
「家政婦してるのはお母さんね。あの子はそれの手伝いよ」
「ほとんど一緒でしょ。しかもあの人ん家……なんだっけ、あのおっさんの名前」
「伊藤さん」
「あ、それそれ」
二人は今、誰の話をしているのだろう。
全然、頭が回らない。
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