抱く、壮大たる夢

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彼女がピアノを見ていたのは、きっと習いたかったから。 文房具屋を眺めていたのは、欲しいものがあったから。 全部、俺が与えてあげたいのに。 「じゃ、頑張らなきゃね」 え…? 急いで顔をあげると、さっちゃんは慈愛に満ちた瞳で俺を見つめてた。 「俺嫌われたんだよ?」 すごく嫌そうな目で見られたんだよ? 贅沢だって、冷たく言われたんだよ? 「まだまだこれからじゃない。頑張ったら、しずちゃんも見直してくれるかもよ?」 「頑張るって?」 「お金がないと何も買えないよね?でもママやパパに頼るのは、しずちゃんが嫌だと思うの。じゃ、どうしたらいいのかしら」 「俺が、いっぱい稼げるようになる…とか?」 「そうね。でもどうやって?」 さっちゃんの問いに、頭をフル回転させて。 浮かんで来たのは、去年、学期末の成績表を持って帰ってきた日のこと。 『…お前、この成績は不味いだろう。将来どうするつもりなんだ?』 『だって頭悪いんだもん』 『お前は努力しないだけだ。勉強が出来ないと、賢くならないんだぞ?賢くなかったら、お金は稼げない。お前は将来困った生活を送りたいのか?』 …勉強、だ。
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