抱く、壮大たる夢

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冬休み。 英会話に行くとたまにしずを見かけて、その度に彼女はあのピアノを眺めていた。 だからなのか、自分でも分からない。 「…just like me they long to be…♪」 生まれてから、毎日と言っていいほど聴かされてるこの曲。 マスカラを塗っている彼女は今日も一番好きなそれを口ずさんでた。 「ママ」 「ん?どうしたの?」 「クリスマスプレゼント、ジャックソウルのソフトだけでいい」 なんだか申し訳なくなって、クリスマスプレゼントは初めて一個だけにしようと思った。 ぴたりと動きを止めた母さんはすぐに後ろを振り返って。 「…サンタさん、もっとプレゼントあげるって言ってたわよ?」 「サンタなんかいないよ。パパなの知ってるから」 「えっ…」 カタッ マスカラを落とした母さんは目を見開いたまま一時停止している。 フローリングに黒の繊維が微かについているのに、何をしているんだか。 「な、な、な、い、いつからっ?!」 「…秘密」 「あなたっ!さっちゃんーっ!ちょっと来て!大変よっ!大事件!」 援護隊を呼ばれる前に早く逃げなくては。 「じゃ、部屋戻るからっ」 「ちょっ!」 サンタクロースなんかいないのは、1年生の時から知っている。 夜、あまりにも大きい足音に目が覚めて見えたのは、プレゼントのパソコンをすごい形相で抱えていた父さんだったから。
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