抱く、壮大たる夢

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今日はいつもに増して遠回りをする彼女の後ろを付いていく。 この二人の時、いや、正確に言うとしずが一人で帰っているこの時間は騎士になった気分になる。 彼女が無事家に帰るのを見届ける、という重大な任務を担っているようだった。 『さっちゃん…そろそろ言ってもいいかしら』 『…なんですか?』 『うちの息子めちゃくちゃ危なくない…?』 『…聞かなかったことにします』 いかにもジョギングしているといったスポーティな格好で、首にかけたタオルで顔を隠した後ろの二人、と。 『てか母さん達も十分危ないけどね』 『ちょっと!あんた少しくらいは隠れなさいよ!ただでさえでかいんだからっ!』 『無理やり連れて来たのはどこの誰よ』 『紀子さん、声大きいですよっ』 『…ごみん』 ニューフェイスの存在に、今日も気付く筈もなかった。 歩くこと数十分、やっと家の前までたどり着いたしず。 …また、だ。 疑問、その二。 彼女はいつも家に入るのを躊躇する。 まるで家を嫌っているみたいに。 あんなにお母さん子なのに、と不思議で仕方が無い。 呼吸を整えてから、門を開けて入っていく姿を確認して、最後の疑問へと足を進める。 家の前で立ち止まり、見上げた先は重々しい黒石の表札。 白文字に刻まれているのは、"伊藤"。 彼女の名字は伊藤ではないはずなのに。 なんでこの家に帰るんだろう?
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